2013年御翼11月号その4

不幸な人の特徴

    

――アルフォンス・デーケン『心を癒す言葉の花束』
千葉敦子さんは、一九八一年に四十歳で乳がんを発病してから、ニューヨークの病院で四十六歳の生涯を閉じるまで、自らのがんの体験について新聞や雑誌に記事を書き続けた。ジャーナリストである千葉さんは、がん患者である自分自身を取材の対象とし、明るいユーモアをもってレポートすることで、世論に多大な影響を与えた。がんになっても母親や妹のいる日本に帰国しない理由を、死生学の哲学者・デーケン先生が尋ねると、「ニューヨークの医師は患者の病状を本人に正直に説明してくれますが、死をタブー視している日本ではそうではありません」と答えたという。彼女の闘病記はベストセラーとなり、日本の医学界にも一石を投じ、医師が患者に十分に説明をし、患者の同意を得る「インフォームド・コンセント」という概念が広まることとなった。千葉さんは常々、自分は無神論者だと公言していた。しかし、絶えず死を意識して、苦しい体験を他者への奉仕に変え、よりよい生を全うした千葉さんの生き方は、『ヨハネによる福音書』(十二章二十四節)にある「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ」を思い起こさせる、とデーケン先生は言う。
 上智大学の教授・デーケン先生は、人の死への不安を四つ挙げている。
●未知なるものを前にしての不安
●人生を不完全なまま終えることへの不安
●自己の消滅への不安
●死後の審判や罰に対する不安
 千葉さんは、がん治療という「未知」だったものを、日本の人たちに明らかにするという「善行」を行った。しかし、自己消滅はしないこと、神の審判の前には、キリストの贖いがあることを伝えられれば、全人格的な救いへと人を導ける。
 「どんな人が幸福になれるかを考えるために、不幸な人の特徴を六つ挙げてみました。思い当たる人は改めていきましょう」とデーケン先生は言われる。
@自己愛に欠けている人 自分を十分に愛せない人は、他者を本当に愛することができません。
A相手を受け入れられない人 不満ばかり並べていたら、結局自分が不幸になります。
B人生の各段階に応じて成長していない人
 私たちは、若いときには、マイホーム、マイカー、仕事の業績など、何かを「持つ」ことが人生の大きな目標になります。しかし中年期からは、いかに「ある」かを考えて、心の温かい人間になることのほうが大切だと思います。定年退職後は、「手放す」ことが課題になります。人生の各段階でうまく軌道修正できない人は、不幸になります。
C他者を意識しすぎる人 精神科医で心理学者の加賀乙彦さんは、著書『不幸な国の幸福論』で、日本人の他者を意識しすぎる性質が、幸不幸に大きくかかわっていると指摘しています。
D人生の危機をチャンスとして使わない人
E信じない人、愛せない人 キリスト教の立場から言うと、人間を超える神の存在を信じることによって、幸福になる人は多いです。大いなる存在の無条件の愛の呼びかけに応えない人は、幸福になるチャンスを見逃しているかもしれません。

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